辰馬は笑みを隠せなかった。久しぶりに銀時に会う、しかも彼の誕生日に。陸奥も驚くくらいがんばって仕事を片付けてきた急いで駆けつけた。だからプレゼントも忘れてしまったけど、きっと、銀時は驚いたあと、あの笑顔で喜んでくれるだろう。
「き~んときく~ん~~誕生日おめ・・・・って、ありゃ?」
チャイムも鳴らさず入った銀時の部屋は、クラッカーのカスや、酒瓶などが転がっていて嵐のあとかと思うくらい散らかっていた。そして、いつも『糖分』と書いてあるはずの額には『銀ちゃん誕生日おめでとう』といびつな字が書いた紙が貼ってあった。
「こりゃぁ・・・もしかせんでも・・・・」
辰馬の空の頭でもわかった・・・しかし、考えたくなかった・・。もうすでに落ち込んでいるのに、口にしたら一生立ち直れないかもしれない・・・・。すると、奥のふすまが開いて寝起きの銀時が出てきた・・・
「ったく、誰だぁ~~。銀さんは昨日飲みすぎて二日酔いなんですよぉ~・・・って、辰馬・・・」
「や、やぁ、ぎ・・金時君」
焦った・・・間違えて『銀時』と呼んでしまうくらい焦ってしまった・・・しかし、そんなことより、よりによって恋人の誕生日に遅れてしまったのだ・・・。たとえ勘違いだったとしても・・・・恋人の誕生日なんて年に数回あるか無いかの大イベントに遅れてしまったのだ。・・・・そんな辰馬野気持ちを知ってかしら知らずか銀時は無言のまま辰馬見つめていた。
(穴が開きそうとはまさにこのことじゃな・・・)
「お前さ・・・今頃何しに来てるわけ?今日もう11日なんですけど。お前銀さんの誕生日11日だと思ってたわけ?一応恋人なのにそんなコトも知らなかったわけ?」
「そ、そうだったかのぅ?すまんなぁ、あはははははっっ~~!!」
泣きそうになるのを必死で抑えて、いつも通り笑う辰馬に銀時は『はぁ』とため息をついて厠に向かってしまった・・・。
「まぁ、テメェのことだから忙しかったんだろうけどなぁ・・・ってあれ?」
厠から出てきた銀時はさっきまでそこに突っ立ってた辰馬がいないコトに気がついた。
「なんだぁ?たくっっ」
まさか、銀時が自分にツッコミを入れないなんて、そこまで怒っていたなんて・・・。能天気キャラを演じることが出来ないほど落ち込んでる辰馬にはどうしてもあの場にいることが出来なくなりとっさに万事屋を飛び出してきてしまったのだ。
(どこにいこうかのぅ・・・)
銀時の誕生日のためにがんばって陸奥から2日も休みをもらったと言うのに・・・。
(しかも、何があっても来るなっていってしまったき・・・・)
行くあてのない辰馬は歌舞伎町の町をぶらぶらと歩き始める。おりょうに会いに「すまいる」に行こうかと思ったが、こんなすさんだ気持ちでは盛り上がる気にはなれない。それに、あの人気者の銀時のことだきっと「すまいる」のみんなにもお祝いされたのだろう・・・・きっと、おりょうは昨日辰馬がいなかったことに触れてくるに違いない・・・・。もし、触れられたら、今度こそおお泣きするだろう・・・・。
(・・・・でも、誰かに話を聞いてほしいのぅ)
―ガッシャーンッ―
辰馬がいきなりいなくなったことを気にも留めず、二日酔いのため二度寝を決め込んでいた銀時の部屋にガラスが割れる音が響いた。
「!!!な、なにっっ!!??また、キャトルミューテーション!!??」
大きな音に驚いて起きた銀時はとっさに股間を隠す。しかし、銀時の前にいたのは、全身タイツのゲーマー星人ではなく、三度笠姿の女、快援隊で辰馬の補佐をしている陸奥だった。
「よぅ、頭はおるかのぅ?」
「お前は辰馬の・・・・」
「陸奥じゃ。いい加減名前くらい覚えたらどうじゃ。冗談はその天パだけにしておけ・・・・ところで頭はどこじゃ」
「天パは関係ねだろ!!??しっらねーよ。あの野郎、俺の誕生日に1日遅れてきただけじゃなくて、いきなりいなくなりやがって。ところで、お前は何しに来たの?辰馬のヤローを連れ戻しにココに来たんなら見当違いだぜ」
「頭はおんしに何も言わんかったんか?」
「ったく、辰馬のヤローどこいったんだよっっ!!!」
あの後、陸奥は教えてくれた。辰馬は銀時の誕生日を確かに覚えていた。
『やつはこの日のために、今までにないくらいの速さで仕事を終わらせた。しっかも、数日前からカレンダーを見てはニヤニヤしっとったの・・・・気持ち悪いったら無かった。それに、頭のカレンダーに珍しく、しかもあんなでかく印がつけてあったんじゃ。やつが忘れるわけないろう。・・・・・それにしても、自分の誕生日に二日酔いとはおんしはアホか?』
『いやいや、今日は11日。銀さんの誕生日は10日!!』
そう、諭した銀時に陸奥は少し考えるそぶりをしたあと、そう言えばと、今まで辰馬立達がいた惑星は地球との時差がちょうど1日だったということを教えてくれた・・・。つまり、辰馬達がいた星の時間で言えば今日は10日なのだ。
『急いどったんじゃのぅ・・・。せっかく買ったプレゼントも忘れてきおった。頭には何があっても2日はココに来るなと言われておったが、長い時間かけてこれ選んでたき』
そういって陸奥が差し出したのは、きっちり包装された箱。
『ケーキじゃ。まったく、腐ること心配しとらんかったんか』
さらに陸奥は箱を持ったままボーっとしている銀時に言った。
『さっさと、追いかけい、頭の心は乙女より純真じゃきに』
『嘘つけっっ!!』
「わしは最低じゃぁーーーーーーー!!!こ、恋人の誕生日わすれるわぁってっっ!!」
銀時が必死で辰馬を探している間、当の本人は手ごろな屋台で安酒を飲みながら、店主に愚痴をこぼしていた。すると、もう一人客が来たらしく「いらっしゃい」と言う声とともに、自分の隣に重みを感じる。謎の客は「少しはずしてくれ」と店主に言った。
「何しに来たんじゃ。金時」
「銀時だってのっ。・・・・・やっと、見つけたぜ。ったく、飲むなら「すまいる」行けよ。探すの面倒だろ」
「わしのことなんて、ほおっちょいたらよかろう」
うつぶせて「・・・・最低な恋人じゃきに」と付け足す辰馬に銀時は「ゴホン」と咳払いをし「あのよぉ・・・」とか「なんだぁ・・」とか躊躇しがちに
「10日が終わる1秒前まで待ってたんだよ・・・・お前が来るの。で、日付変わっても来る様子ねぇから、自棄酒飲んで、今日は二日酔いだよ。・・・本当のコト言うなんてカッコ悪いだろ・・・・一応お前相手だとSキャラって設定だし」
「言えよ・・・銀さんは心が広いからぁ、1日くらいなら待っててやる」
そういって銀時は辰馬の隣に腰をかけ、頭を上げてくれといわんばかりにやさしく辰馬の頭をなでる。そして、極め付けに
「なぁ、言えよ」
と、辰馬の耳元で囁いた。銀時は知っていたのだ辰馬が自分の低い声に弱いこと。だから、「頼むよ、辰馬」と止めを刺す。辰馬の方も銀時の行動に耐え切れなくなり、仕方なく顔を上げる。
「き・・・銀時・・・誕生日おめでとう」
「それと・・遅れてす「おっとっ!!俺が聞ききたいのは、謝罪の言葉なんかじゃねぇぜ」
辰馬の口に人差し指を立て、謝ろうとするのをとめ『どうせなら、もっといい声が聞きてぇなぁ。2日もいてくれるんだろ?俺のために』と銀時はまた辰馬の耳元で囁いた。